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木が長生きなのはなぜ? 死にながら生きているから

今回はチコちゃんに叱られる! ▽動物園の謎▽なぜ木は長生き▽なぜジョッキで飲む 初回放送日:2025年7月11日を紹介。


木が長生きなのはなぜ?




木が長生きなのはなぜ?


チコちゃん「ねぇねぇ岡村、この中で一番、自然を愛するステキな大人ってだーれ?」


チコちゃん「木が長生きなのはなぜ?」


チコちゃんの答えは、「死にながら生きているから。」



死にながら生きているから


なぜ木は数千年生きられるのか? 人間と樹木の寿命の差に見る驚きの秘密

私たち人間がどれだけ長生きしても、その寿命は一般的に100年前後です。


ギネス記録として残る人類史上最高齢の記録は、フランスのジャンヌ・ルイーズ・カルマンさんが達成した122歳という驚異的な長寿記録です。




しかし、目を世界中の樹木に向けてみると、その寿命のスケールは私たちの想像を遥かに超えます。


例えば、現在確認されている世界最高樹齢の木とされる、アメリカの「メトシェラ」は、なんと4800年以上もの間、生き続けています。



一見すると枯れているように見えるかもしれませんが、これは厳しい環境に適応した姿であり、今もなお力強く生きていることが確認されています。


一体なぜ、私たち人間と樹木の間には、これほどまでの寿命の差が生まれるのでしょうか。


その答えは、生命を形作る「細胞」と、樹木独自の生存戦略に隠されています。



寿命の鍵は「細胞分裂」にあり

人間と樹木の寿命の差の最も大きな理由の一つは、「細胞分裂の回数」にあると考えられています。



人間の細胞と老化の仕組み

私たちの体を構成する細胞は、常に新しい細胞に入れ替わるために、細胞分裂を繰り返して自身のコピーを作ります。


しかし、細胞分裂を何度も繰り返すうち、細胞内にある遺伝情報、いわゆる「DNA」が傷つくリスクが高まります。


DNAの損傷が増えすぎないように、人間の細胞はあらかじめ決められた回数の分裂を行った後、それ以上の分裂をやめてしまいます。


つまり、新しい細胞を生み出すのを停止するわけです。


これが、「老化」につながるプロセスと考えられています。



樹木の驚異的なDNA保護機能

一方、樹木も細胞分裂によってDNAが傷つくリスクはあります。


しかし、木には人間のDNAよりも遥かに強力に守る仕組みが備わっています。




この仕組みのおかげで、樹木のDNAはそう簡単には傷つきません。


その結果、木は人間よりもはるかに多くの細胞分裂を行うことができ、長い期間にわたって「若い細胞」を生み出し続けることができるのです。



これは、木が人間よりも長い期間、「若さ」を保つことができる、一つの大きな理由です。



「死にながら生きる」という独自の生存戦略

人間の場合、古くなったり死んだりした細胞は、尿や便といった老廃物として体外に排出されることがほとんどです。


しかし、木の場合は、死んだ細胞が逆に木を長生きさせる重要な役割を担っているという、驚くべき特徴があります。


これが、樹木の長寿の秘密である「死にながら生きている」という状態の答えにつながります。



樹木を支える「心材」の役割

例えば、スギの木の断面を見たとき、年輪の中央部分が濃い色をしているのに対し、その周囲は薄い色をしているのにお気づきでしょうか。




実は、この濃い色の部分はすべて死んだ細胞でできています。


この中心部分は「心材(しんざい)」と呼ばれ、高い樹木全体を支える「体幹部」にあたります。


心材は、人間でいうところの「骨」のような役割を果たしています。


特筆すべきはその強靭さで、同じ重さの鉄が約1トンの力で変形してしまうのに対し、心材は鉄を超える1.8トン以上の力を加えても、わずかな変形に留めるほどの強度を持っています。



この強固な心材があることで、木は倒れることなく、高く大きく成長し、長生きすることができるのです。



死んだ細胞が「血管」になる

木全体の構造を大きく分けると、中心の「心材」、その周囲の「辺材(へんざい)」、そして一番外側の「樹皮」に分けられます。



辺材は心材よりも新しい細胞で構成されています。


樹皮と辺材の間には形成層という0.1mmほどの薄い層があり、木の細胞分裂は主にこの形成層で発生。


ここでも生きている細胞はごく少数で、ほとんどが死んだ細胞でできています。




これらの死んだ細胞たちは、植物に欠かせない水分の通り道である「管」の役割、つまり「血管」の役割を担っています。


死んだ細胞が全体に水分を運び、わずかな生きている細胞をしっかりとサポートしているのです。



驚異的な省エネ性とリカバリー能力

一般的に、木全体の90%以上の細胞が死んでいると考えられています。


これは、樹木が長寿であるための、さらなる要因となっています。


死んだ細胞はエネルギーを必要としないため、木は圧倒的に少ないエネルギーで生活できる「省エネ性」を生み出しています。


死んだ細胞を骨や血管として有効活用し、エネルギー消費を最小限に抑えることができる点も、木の長寿の理由の一つです。


さらに、木には人間でいう「脳」や「心臓」のような、失うと致命的になる「急所」が存在しません。


たとえ倒れた木からでも新しい芽が出て復活するなど、強力なリカバリー機能も備わっています。


もちろん、動けないために外敵に無防備であるという弱点もあります。


しかし、樹木は私たち人間とは全く異なる、驚異的な生存戦略を確立してきたのです。



世界一高い木として知られているアメリカのハイペリオンは116.07m




世界一太い木はメキシコのトゥーレの木でその太さは1周58m。



樹木の「死にながら生きる」という生命の神秘は、私たちに生命の多様性と可能性を教えてくれます。


次に木を見上げたとき、その悠久の歴史と、細胞レベルでの驚くべき仕組みに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。




結論


というわけで、


「木が長生きなのはなぜ?」は、


「死にながら生きているから」


でした。




解説してくれたのは


東京農業大学の桃井尊央准教授

桃井 尊央 (モモイ タカオ)

MOMOI Takao

職名
准教授

留学歴
2019年10月 – 2020年09月 New Zealand Forest Research Institute (Scion) 客員研究員

学位
博士(林学) ( 2013年10月 東京農業大学 )

学内職務経歴
東京農業大学 地域環境科学部 森林総合科学科 副手
2003年04月 – 2008年03月

東京農業大学 地域環境科学部 森林総合科学科 助手
2008年04月 – 2014年03月

東京農業大学 地域環境科学部 森林総合科学科 助教
2014年04月 – 2021年03月

東京農業大学 地域環境科学部 森林総合科学科 准教授
2021年04月 – 現在

研究分野
ライフサイエンス / 木質科学

研究キーワード
木材工学 材形成 樹木年輪年代学 木質材料 木材加工
(大学HPより)




今回も最後まで読んでくれてありがとう。
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