今回はチコちゃんに叱られる! ▽“痛い!”の謎▽早口ことばの謎▽時計の針の謎 初回放送日:2025年10月10日を紹介。
なんで早口言葉を言うようになったの?

なんで早口言葉を言うようになったの?
チコちゃん「ねぇねぇ岡村、この中で一番、上手に言葉を使いこなすステキな大人ってだーれ?」
チコちゃん「なんで早口言葉を言うようになったの?」
チコちゃんの答えは、「市川團十郎がのどの薬で救われたから。」
市川團十郎がのどの薬で救われたから
早口言葉は日本の伝統! 300年前から続く言葉遊びのルーツに迫る!
皆さん、こんにちは!
突然ですが、早口言葉、得意ですか?
「生麦生米生卵」とか、「隣の客はよく柿食う客だ」とか。
舌がもつれそうになりながら、ついつい挑戦してしまいますよね。
実はこの早口言葉、私たち日本人が大昔から親しんできた、とっても奥深い言葉遊びの文化なんです!
今回は、その意外なルーツを辿ってみましょう。
📜 古代にまで遡る、言葉のリズム
早口言葉のルーツは、なんと『古事記』や『日本書紀』の時代にまで遡るようです。
現代のような「早口言葉」という形ではなかったものの、似たような言葉遊びが既に登場していました。
例えば、『古事記』にはこんな和歌があります。
「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を」
「八雲」「八重垣」と、同じような音が何度も繰り返されています。
また、『万葉集』にも、
「河上の つらつら椿 つらつらに 見れども飽かず 巨勢の春野は」
という歌が。
「つらつら」という言葉が重ねられ、まるで早口言葉のようなリズムを生み出していますよね。
和歌を愛する文化が古くからあった日本では、こうした言葉の音や響きを楽しむ遊びが、貴族や上流階級の間で楽しまれていたんです。
🎭 江戸時代に大流行! 庶民の心を掴んだ「外郎売」の口上
では、この言葉遊びが、どのようにして私たち一般庶民の文化として広まっていったのでしょうか?
その大きな転機となったのが、江戸時代です。
そして、そのきっかけを作ったのが、当時の大人気スター、二代目・市川團十郎が演じた「外郎売(ういろううり)」という歌舞伎の演目でした。
市川團十郎といえば、歌舞伎界の代々続く大名跡です。
現在の十三代目まで遡ること300年。
二代目團十郎は、江戸っ子から絶大な人気を集めた名役者でした。
彼が演じた『外郎売』は、小田原の薬商人のお話です。
この演目のクライマックスが、薬の効能や由来を早口でスラスラとまくし立てる「口上(こうじょう)」のシーンでした。
「武具馬具 武具馬具 三武具馬具 合わせて 武具馬具 六武具馬具」
こんなセリフが飛び出します。
5分以上の長いセリフを、よどみなくこなす二代目團十郎の名人芸は、まさに圧巻!
庶民の最大の娯楽だった歌舞伎で、この早口の口上が大きな話題となり、江戸の町中で大流行したんです。
人々は、外郎売のセリフを真似したり、オリジナルの早口言葉を作って遊んだりするようになりました。
📚 寺子屋の普及も後押しに
このブームをさらに後押ししたのが、寺子屋の普及です。
江戸時代には、庶民も読み・書き・そろばんを身につけるようになり、言葉の文化がより広く浸透しました。
こうして、早口言葉は言葉遊びの一つとして、庶民の間にしっかりと根付き、定着していったのです。
💡 元ネタは喉の不調? 外郎売に込められた感謝の気持ち
ところで、二代目團十郎がなぜこの『外郎売』という演目を作ったかご存知ですか?
実は、その裏には、のどの不調を乗り越えたエピソードがありました。
ある時、二代目團十郎は咳や痰に悩まされていました。
役者にとって、のどの不調は致命的です。
その時に飲んで回復したのが、小田原の「外郎」という漢方薬でした。
薬への感謝の気持ちを込めて、薬の効能を早口言葉に乗せてまくし立てるという、この素晴らしい演目が生まれたのです。
ただの言葉遊びではなく、感謝の気持ちが込められた物語だったなんて、素敵ですよね!
🏆 難易度高すぎ! オリジナル早口言葉に挑戦
さて、最後に、ある番組で募集されたオリジナル早口言葉コンテストの結果をご紹介します。
応募総数1934件の中から選ばれた、難易度ランキングトップ5です!
どれもこれも、舌を噛みそうな難しさですよ。
第5位:「歯科医院に鹿来て 歯科医仕方ないしと鹿に歯科検診 鹿歯科医の質問にシカトし 歯科医鹿仕返しにシカトする」
第4位:「ガム噛むギャグ書く客×3」
第3位:「朝、傘貸す。朝、傘さす。朝、赤坂サカス。×3」
第2位:「加賀藩 多賀隆忠(たがたかただ)が 高い価格の硬い刀買いたかったから 多賀藩 加賀氏から 多賀隆忠が高い価格の硬い刀買った」
第1位:「生貯蔵酒 貯蔵中 本醸造酒 醸造中×3」
いかがでしたか?
特に1位の「生貯蔵酒~」は、何度読んでも難しすぎますね!
早口言葉は、私たちのご先祖様が楽しんできた、言葉の力とリズムを楽しむ文化です。
歌舞伎役者の名人芸から庶民の遊びへと広がり、今もなお受け継がれていると思うと、なんだかロマンを感じますよね。
皆さんもぜひ、お気に入りの早口言葉を見つけて、声に出して楽しんでみてください!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
結論
というわけで、
「なんで早口言葉を言うようになったの?」は、
「市川團十郎がのどの薬で救われたから」
でした。
解説してくれたのは
清泉女子大学の今野真二教授。
氏名
今野 真二
フリガナ
コンノ シンジ
職名
教授
所属
総合文化学科〈日本文化領域〉(~2024年度 日本語日本文学科)
取得学位
修士
学位取得大学
早稲田大学
専門分野
日本語学
研究テーマ
(1)日本語の歴史:室町時代と明治時代とをおもなフィールドとして、日本語の歴史をどのように記述すればよいのかを追究している。
(2)日本語の表記研究:日本語の表記は漢字を専用していた時期から、漢字・仮名交用時期へと移行したが、表記をとおして日本語をとらえることを模索している。
所属学会(役職)及び受賞歴
【所属学会】
日本語学会 評議員
日本言語学会
訓点語学会
木簡学会
全国大学国語国文学会 委員
【受賞歴】
『仮名表記論攷』(2001年、清文堂出版)によって、第30回金田一京助博士記念賞受賞
主要業績
『仮名表記論攷』 清文堂出版 2001年
『消された漱石』 笠間書院 2008年
『百年前の日本語』 岩波新書 2012年
『正書法のない日本語』 岩波書店 2013年
『かなづかいの歴史』 中公新書 2014年
『仮名遣書論攷』 和泉書院 2016年
『北原白秋』 岩波新書 2017年
『漢字とカタカナとひらがな』 平凡社新書 2017年
『乱歩の日本語』 春陽堂 2020年6月
『日本語の教養100』河出書房新社 2021年2月
(大学HPより)
今回も最後まで読んでくれてありがとう。
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