今回はチコちゃんに叱られる! ▽苦いもの克服法▽電車のガタンゴトン▽泥仕合 初回放送日NHK総合テレビジョン12月5日(金)午後7:57を紹介。
泥仕合って何?
泥仕合って何?
チコちゃん「ねぇねぇ岡村、この中で一番、いろんな戦いを経験してきたステキな大人ってだーれ?」
チコちゃん「泥仕合って何?」
チコちゃんの答えは、「泥まみれになる歌舞伎の見せ場。」
泥まみれになる歌舞伎の見せ場
「泥仕合」って実は歌舞伎の豪華な見せ場だった! 政治の場へ転じた言葉の歴史!
現代のニュースなどで「泥仕合」という言葉を聞くと、あまり良いイメージは持ちませんよね。
辞書的な意味でも「相手の弱点や秘密を暴き合う、醜い争い」といった定義になっています。
しかし、この「泥仕合」という言葉の元々の意味は、なんと歌舞伎の舞台で演じられた、泥まみれになる大迫力の見せ場だったのです。
歌舞伎誕生と「女方」の誕生秘話
「泥仕合」のルーツをたどる前に、まずは歌舞伎の歴史を見てみましょう。
歌舞伎が生まれたのは、今から400年以上前の京都でした。
当初は女性が踊る女歌舞伎や、
若い少年たちが踊る若衆歌舞伎がメインで演じられていました。
しかし、人気が過熱し、ひいきの役者を巡って客同士のケンカ沙汰が頻発したため、治安悪化を理由に幕府から禁止されてしまいます。
そこで生まれたのが、成人男性が役者を演じる野郎歌舞伎です。
女歌舞伎が禁止された回避策として、男性が女性役を演じる女方(おんながた)がこの時に誕生しました。
女方は、実際の女性よりも動きや所作を強調し、女性の理想像を作り上げるという高度な技術を持ち、今日では芸術の域に達しています。
人間国宝 坂東玉三郎さん
関西の「和事」と江戸の「荒事」
1600年代後半になると、歌舞伎の演技は大きく進化しました。
上方(京都や大坂):なよなよとした二枚目男性の姿を表現する和事(わごと)が発展しました。
これは恋愛などにおける感情の機微を表現します。
江戸:見得(みえ)や六方(ろっぽう)といった力強い演技や、顔に特徴を付ける隈取(くまどり)を取り入れた荒事(あらごと)が発展しました。これは超人的で豪快な力強さを表現しました。
観客を喜ばせる舞台装置の進化
1700年代後半には、舞台装置も進化し、お客さんを驚かせたり、楽しませたりする仕掛けが次々と考案されました。
せり出し:床下から役者を登場させる仕掛けで、幽霊や妖術使いを突然出すことで客を驚かせました。
廻り舞台:舞台中央の床を回転させ、素早い場面転換と共にワクワク感を演出しました。
この「お客さんを喜ばせる」という観点から、この時代に生まれたのが「泥仕合」につながる特殊な演出でした。
泥仕合の元祖と現代への影響
歌舞伎では、登場人物同士が争う場面が、特殊な状況で行われる場合に「〇〇仕合」と特別に呼ばれていました。
屋根仕合:屋根のセットを組んでその上で争う場面。
水仕合:舞台に水を用意して争う場面。
そして、寛延2年(1749年)に演じられた「曽我後日難波(そがごにちなにわ)のかしく」という作品で、「泥仕合」が演じられたという記録が残っています。
芝居小屋の様子を記した本には、舞台に泥を用意して二人の役者が争うイラストも登場しています。
前方の席のお客さんは、泥はねを防ぐために、真菰(まこも)で編んだシートを使っていたそうです。
これは、現在の水族館のショーで使われるビニールカバーのようなものですね!
この、泥を塗りたくることで争いの激しさをビジュアル的に表現した仕掛けが「泥仕合」の元祖とされています。
醜い争いを指す言葉へ転じる
この「泥仕合」という言葉は、泥で汚れながら争う様子から、徐々に醜い争いを指す言葉へと転じていきました。
1930年頃には、国会の与野党の争いを「泥仕合」と表現する文章も登場し、一般的に用いられるようになります。
1931年に出版された新語を載せた辞典にも掲載されるようになりました。
今でも歌舞伎の「泥仕合」は公演されることがあります。
この言葉が持つイメージは時代と共に変わりました。
しかし、そのルーツは、観客を熱狂させたエネルギッシュな舞台芸術にあったのです。
歌舞伎の泥仕合は今でも公演されています。
最近では2023年6月に博多座で「夏祭浪花鑑(なつまつりなみわかがみ)」が演じられたときに公演されました。
泥を塗りたくる事で争いの激しさをビジュアル的に表現しているこの仕掛けが由来だったんですね。
結論
というわけで、
「泥仕合って何?」は、
「泥まみれになる歌舞伎の見せ場」
でした。
解説してくれたのは
東京女子大学の光延真哉教授。
教授
ミツノブ シンヤ
光延 真哉
現代教養学部 人文学科 日本文学文化専攻
研究キーワード
江戸時代 / 歌舞伎 / 日本文化
研究分野
日本近世文学
研究テーマ
台本を中心とした一次資料の分析を通じて江戸時代の歌舞伎を研究している。合わせて最近では、時代とともに生きる古典芸能としての歌舞伎が、現代の日本文化にどのような影響を与えてきたのか、そして将来どのような影響を与え得るのか、といったテーマについても関心を持っている。
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コメント
高校の古文学習で、江戸時代の文学に触れることはあまり多くないですが、江戸文学は、これからの時代に必要とされる「古典」として大きな可能性を秘めています。江戸文学はそれまでの時代の文学からインスピレーションを受けながら、それを作り替えることで時代に即した新たな価値を創出していきました。古典の再創造という今日的な課題を地で行っていたという点で、大きな示唆を与えてくれます。また、日本文化へのグローバルな関心がますます強まっていますが、衣食住その他の伝統文化にせよ、マンガを始めとしたポップカルチャーにせよ、直接的な源流は江戸の文学・文化に見出せます。今後日本が文化的なコンテンツを開発していく上で、江戸文学は無数の宝を秘蔵する宝物庫でもあります。古いものを活かして、どのように新しいものを創造していけばよいか、「温故知新」の発想力を江戸文学を通じて養いましょう。
(大学HPより)
今回も最後まで読んでくれてありがとう。
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