今回はチコちゃんに叱られる! ▽童話や昔話の謎▽とろとろ食感の謎▽座席の色の謎 初回放送日:2025年11月14日を紹介。
なんで劇場や映画館の座席は赤いの?
なんで劇場や映画館の座席は赤いの?
チコちゃん「ねぇねぇ岡村、この中で一番、映画好きのステキな大人ってだーれ?」
チコちゃん「なんで劇場や映画館の座席は赤いの?」
チコちゃんの答えは、「座る人をステキに見せるため。」
座る人をステキに見せるため
なぜ劇場や映画館の座席は赤いの? 豪華さと美しさを演出する秘密!
映画館や劇場に入ると、客席の椅子が赤色であることが多いですよね。
この「赤」には、実は単なるデザインではない、西洋の歴史と特別な意図が込められています。
その背景には、どんな物語があるのでしょうか?
赤の起源は「オペラハウス」の貴族席
劇場や映画館の座席に赤が多く使われるようになった起源は、西洋のオペラハウスにあると言われています。
オペラは、16世紀末にイタリアのフィレンツェで誕生した舞台芸術です。
最初期のオペラは、王族や貴族など、限られた人々に向けたものでした。
その後、料金を払って入場できるオペラハウスが誕生し、裕福な市民にも文化が広まっていきました。
ステータスシンボルとしての「赤」
当時のオペラハウスの構造は、現在とは大きく異なりました。
1階席に該当する部分は基本的に立ち見で、座席は設置されていませんでした。
座席が設けられていたのは、劇場の側面にある個室(ボックス席)でした。
この個室は、分譲マンションのように部屋ごと購入する形が取られていました。
当然ながら費用は莫大で、主な購入者は貴族たちに限られていました。
この個室の座席に赤が多く使われた理由が、権威とステータスを示すためです。
当時、赤い染料は非常に貴重であり、赤色は高級品のイメージが強かったのです。
高級な赤い席に陣取っていること自体が、特別なステータスシンボルとして機能していました。
パリ・オペラ座が広めた「美しく見せる赤」
この伝統的な「権威の赤」に、さらにロマンチックな意図を加えた建築家がいました。
フランス・パリのオペラの聖地、通称オペラ座(正式名称:ガルニエ宮)を建築したシャルル・ガルニエです。
ガルニエは、赤を基調に金色をあしらった高級感あふれるデザインを採用しました。
その際、彼は「女性を美しく見せる」という目的で、座席に赤を用いたというエピソードが残っています。
座席の赤色が光を反射し、観客である女性たちの顔をほんのり赤く、健康的に染める効果を狙ったのです。
当時のオペラハウスは、演劇鑑賞だけでなく社交の場という側面も持っていたため、このような「美しく見せる仕掛け」は非常に重要でした。
このガルニエによるオペラ座は、その美しさから世界中で話題となり、世界中の劇場設計のお手本として広く知れ渡ることになりました。
映画館の座席も、このオペラハウスの影響を強く受けていると考えられています。
暗闇で目立たない「視覚効果」も
ちなみに、「座る人をステキに見せる」という目的の他にも、赤色には実用的な視覚効果もあります。
人間の目は、暗い場所では赤色がより暗く見えるという特性を持っています。
明るいうちは座席の赤色が目立つため、席を見つけやすくなります。
しかし、客席が暗くなると、赤色は目立ちにくくなり、観客は舞台や映画に集中しやすくなるのです。
初期の貴族の権威を示す赤も、ガルニエによる女性を綺麗に見せる赤も、そして視覚効果も、すべてはそこに座る人(または座席)をステキに見せるという、豪華な劇場空間の演出の一部だったのですね。
結論
というわけで、
「なんで劇場や映画館の座席は赤いの?」は、
「座る人をステキに見せるため」
でした。
解説してくれたのは
昭和音楽大学の石田麻子教授。
石田 麻子
職名 教授
所属 昭和音楽大学
研究分野 舞台芸術政策
最終学歴 東京芸術大学大学院 音楽研究科 博士課程
学位 学術博士
Web-site:昭和音楽大学オペラ研究所
プロフィール
<プロフィール>石田麻子(いしだあさこ)
広島県出身。昭和音楽大学教授、オペラ研究所所長、舞台芸術政策研究所所長、学長補佐。
東京藝術大学大学院音楽研究科オペラ専攻非常勤講師。文化庁委託『日本のオペラ年鑑』編纂委員長(2016年~)、日本音楽芸術マネジメント学会理事長、文部科学省科学技術・学術審議会専門委員、文化審議会文化政策部会委員、同審議会文化経済部会委員、(独)日本芸術文化振興会プログラムディレクター(調査研究分野)などを務めている。
東京藝術大学大学院音楽研究科博士課程修了、学術博士。
<研究分野> 国内外の歌劇場や芸術祭の組織運営研究や、舞台芸術政策に関する研究、近年は劇場運営および舞台制作の専門人材育成に関する調査研究を進めている。
<教育分野> 昭和音楽大学アートマネジメント・コースで「文化政策論Ⅱ」(海外の劇場運営からみた各国の文化政策)「芸術運営演習」「卒業研究」、大学院で「博士舞台芸術マネジメント特講」、東京藝術大学大学院(修士課程)「オペラ特殊研究」の講義などに加え、各大学等で招聘講師などを務める。
<著書・論文等>(一部抜粋)
<書籍>単著に『市民オペラ』(集英社新書、2022年)、『芸術文化助成の考え方』(美学出版、2021年)。編著に『クラシック・コンサート制作の基礎知識』(日本クラシック音楽事業協会、2013年)、日本語版監修に『クラシック音楽家のためのセルフマネジメント・ハンドブック』(アルテスパブリッシング、2020年)、共著に『デジタルアーカイブ・ベーシックス4 アートシーンを支える』(勉誠出版、2020年)、『オーケストラ解体新書』「日本のオーケストラの課題を語る―鼎談」石田麻子、西村朗、山田和樹(中央公論新社、2017年)、『ワーグナー』(河出書房新社、2013年)などがある。
<論文> 「ヨーロッパのオペラ・フェスティヴァルにみる舞台芸術と観光の政策領域の融合」『日本音楽芸術マネジメント学会誌』第1号(2009年)、「音楽を中心とした地域振興の一考察」『都市観光の推進による地域づくり支援調査報告書』国土交通省(2007年)、「ブレゲンツ音楽祭」『都市・地域レポート2007』国土交通省(2007年)、『フランスにおける劇場人材育成の現状~エクサン・プロヴァンス音楽祭を例に』(共著)昭和音楽大学アートマネジメント研究所紀要(2015年)など。
<プログラム寄稿> 「オペラ≪カーリュー・リヴァー≫の誕生~ブリテンと能≪隅田川≫」ソウル市オペラ団≪カーリュー・リヴァー≫公演プログラム、韓国語(2016年)、「韓国のオペラ上演の現状とオペラ歌手~アジアから世界へ」藤原歌劇団《ルチア》公演プログラム(2018年)、「オペラ劇場の現在~2018」ルスティオーニ「オペラ歌手のためのマスタークラス」プログラム(2018年)「オペラを牽引する女性たち」東京二期会《メリー・ウィドウ》公演プログラム(2020年)など。
<海外:国際シンポジウム招聘講演等>(一部抜粋)
国際シンポジウム招聘パネリスト:‘Opera Europa in Venezia-Opera beyond Europe-‘ 主催:Opera Europa 会場:Teatro Fenice, Venezia, 2014.
国際シンポジウム招待講演:’Arts Education from Japan to Asia’ 主催:Federation for Asian Cultural Promotion in Panang, Malaysia, 2017。国際シンポジウム招待講演:’Jouer l’opéra au Japon: réception et tendances actuelles’ Colloque International,Corps et Message~De le Structure de la traduction et de l’daptation, Université de Strasbourg, France, 主催:ストラスブール大学、フランス国立ラン歌劇場、2018年3月23日。
国際フォーラム招待講演:「超越日本的歌劇 Opera beyond Japan」第2回国際アーツ・アドミニストレーション上海フォーラム、2018年11月25日。
国際シンポジウムの企画・モデレーター「舞台芸術における国際共同制作の最前線~World Opera Meeting in Tokyo 2020~」、2020年1月。
北京大学国際オペラシンポジウム・招待講演、2022年1月。
釜山市の新劇場計画記念シンポジウム・招待講演、2022年4月。
(大学HPより)
今回も最後まで読んでくれてありがとう。
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